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日本語レベルと試験合格のポイント:JLPTと特定技能試験の違いとは?

March 5, 2025

はじめに

外国人材を採用する際に避けて通れないのが「日本語能力の見極め」です。
履歴書に「JLPT N3」「JFT-Basic A2合格」とあっても、「実際、現場でどこまで通じるのか?」「どの部署に配属できるのか?」が判断しにくいと感じる企業担当者は少なくありません。

この記事では、企業担当者向けに、以下を網羅的に解説します:

  • JLPTとJFT-Basicの違い
  • JLPT N4〜N1までのレベルの違いと実務対応力
  • 採用判断や配置の参考となる評価基準
  • 採用後に企業が行うべき支援内容

特定技能に求められる日本語力とは?

特定技能1号の在留資格で就労するには、原則以下いずれかの日本語試験の合格が求められます:

  • JFT-Basic(A2レベル)
  • JLPT(日本語能力試験)N4以上

※介護分野では、上記に加えて「介護日本語評価試験」の合格も必要です。

JLPTとJFT-Basicの違い

JLPT各レベル別の業務対応力(実務目安)

N4(基礎的な日本語力)

  • 語彙:約300〜400漢字、1,500語程度
  • 会話:日常生活の簡単な表現を理解できる
  • 書類:簡単な掲示や指示書をゆっくり読めば理解可
  • 接客:定型文での対応は可能、臨機応変な対応は困難
  • 適性職種:外食・清掃・農業・食品工場(単純作業)

🔸「これを洗ってください」など簡単な指示に対応可能。
🔸 電話・接客・複雑な説明業務には補助が必要。

N3(職場対応力あり)

  • 語彙:~650漢字、3,000語程度
  • 会話:職場での基本会話・やりとりは可能
  • 書類:業務マニュアルが読めるレベル
  • 接客:簡単な質問への返答が可能
  • 適性職種:外食・宿泊・介護補助・工場ラインリーダー

🔸 N4と比べて「文章を読む力」「業務理解力」が向上。
🔸 フロント・レジ業務も簡単な対応なら可。

N2(実務即戦力レベル)

  • 語彙:~1,000漢字、6,000語程度
  • 会話:日常+職場の会話を理解・運用可能
  • 書類:業務手順書・安全マニュアルなどを自力で読解
  • 接客:日本人同様の対応が可能(ただし敬語レベルには個人差あり)
  • 適性職種:宿泊(接客)、建設現場リーダー、介護現場、飲食ホール

🔸 リーダー補佐や教育係としても配置可能
🔸 書類処理、チーム内会話、クレーム対応も一部可能

N1(日本人とほぼ同等の対応が可能)

  • 語彙:~2,000漢字、10,000語以上
  • 会話:ビジネス日本語も一部使用可能
  • 書類:報告書・申請書類・社内文書も理解・作成可能
  • 接客:流暢な敬語、柔軟な対応が可能
  • 適性職種:ホテルフロント、介護責任者候補、外国人教育担当

🔸 チームマネジメントや内部文書作成も可能なレベル
🔸 N1保持者は将来的に永住・キャリアアップ志向が強い傾向あり

JFT-Basic(A2レベル)の実務的目安

  • 会話:日常会話、職場の簡単な指示に反応可能
  • 書類:ピクトグラムや図解つき文書なら対応可
  • 職務:厨房補助・清掃・仕分け・単純作業系に適性
  • 注意:丁寧な教育と通訳サポートが前提

🔸 N4よりもやや実践寄りな内容が出題されるが、漢字読解力は弱め。

採用時のチェックポイント(企業向け)

採用後に企業ができる支援

  • 📘 やさしい日本語マニュアルの整備
  • 🧑‍🏫 社内での日本語学習支援(e-learning、ペア制度)
  • 💬 翻訳アプリや翻訳カードの導入
  • 🧑‍🤝‍🧑 多国籍スタッフとの文化交流機会の提供

よくある誤解と注意点

❌ 「N4があれば即戦力」

→ 最低限の理解はできますが、職場教育が前提です。

❌ 「N3だから完璧に接客できる」

→ 形式的な接客はできますが、イレギュラー対応は要フォロー

❌ 「JFT-BasicはJLPTより劣る」

→ 試験目的が違うだけであり、特定技能にはJFTも正式に認定されています。

まとめ:レベルに応じた受け入れ設計が成功の鍵

外国人の日本語力は、試験合格=即戦力ではなく、
どの業務まで任せられるか」を見極めた上で、教育体制をどう構築するかが鍵です。

日本語力に合わせた業務配置と支援を行うことで、
外国人材の能力を最大限に引き出し、企業の戦力として長期的に活躍できる環境が整います。

出典・参考資料