はじめに
特定技能制度では、外国人材の就労だけでなく、生活面での支援まで含めた体制づくりが企業に義務付けられています。
その中核を担うのが、「登録支援機関」と呼ばれる外部支援パートナーの存在です。
この記事では、登録支援機関の定義・役割・法律上の義務・利用のメリット・費用相場・選び方のポイント・よくあるトラブルまで、包括的に解説します。
登録支援機関とは?制度上の定義
登録支援機関とは、特定技能1号外国人の生活や就労を支援するために出入国在留管理庁に登録された法人・団体のことです。
企業が外国人を受け入れる際、10項目の支援を行う義務がありますが、それを外部委託できる唯一の存在が登録支援機関です。
対象:特定技能「1号」外国人のみ
特定技能「2号」には支援義務なし(企業の任意)
登録支援機関が提供する11の支援内容【法令義務】
企業が自ら行うか、登録支援機関に委託することが義務付けられている支援は以下の通りです:
1. 事前ガイダンスの提供(来日前)
仕事内容、労働条件、生活環境などを外国人本人に対して母国語などで説明。
2. 出入国時の送迎
空港からの送迎、日本到着後の移動支援。
3. 住居確保と生活に必要な契約支援
アパート探し、電気・ガス・水道・携帯・銀行口座など生活インフラ契約の支援。
4. 生活オリエンテーションの実施
防災・交通・ごみ出しルールなど日本での基本生活ルールを説明。
5. 行政手続きの同行支援
住民票登録、マイナンバー取得、年金・健康保険の加入手続きへの同行・サポート。
6. 日本語学習支援
語学学校の紹介、教材提供、自主学習支援など。
7. 相談・苦情への対応体制の整備
労働条件・人間関係・生活トラブルへの相談窓口設置と対応。
8. 日本人との交流促進支援
地域行事・ボランティア活動・交流イベント等の参加を促進。
9. 転職や再就職支援(受入れ困難時)
会社都合での契約終了時、次の職場を探す支援。
10. 定期的な面談の実施
外国人本人との月1回以上の面談を通じて、就労状況や生活面の課題を把握。
11. 支援状況の把握・記録・報告義務
支援状況の文書記録および入管庁への報告を適切に行う。
登録支援機関を利用するメリット(企業側)
負担軽減
特定技能制度に不慣れな企業にとって、生活支援を全て自社で行うのは大きな負担。
登録支援機関の活用で業務分担が可能に。
専門性・経験を活かせる
支援機関は多言語対応スタッフを揃え、過去の支援実績が豊富。外国人材にとっても安心。
トラブル防止
日本語・文化の違いによる誤解やトラブルの未然防止に役立つ。
入管対応がスムーズ
報告義務・文書整備などの煩雑な入管対応も委託可能。
登録支援機関を選ぶときのチェックポイント

よくある質問(FAQ)
Q. 登録支援機関を使わずに自社で支援してもいいの?
→ 可能です。 ただし、10項目すべてを適切に実施し、入管への定期報告義務も企業が果たさなければなりません。中小企業では負担が大きいため、外部委託が一般的です。
Q. 登録支援機関は途中で変更できる?
→ 可能です。 変更時には、入管庁への届出が必要です。
よくある誤解・トラブル事例
❌ 登録支援機関を通せば全て任せてOK?
→ 支援義務の委託は可能でも、「企業の責任」は残ります。
支援状況の管理・報告義務は企業も連帯して負っています。
❌ 支援内容が不十分でも問題にならない?
→ 違法または不適切な支援は企業にも行政指導が入る可能性あり。
報告義務違反や支援放棄は制度からの除外措置の対象になります。
❌ 実績が多い=安心?
→ 実績の数ではなく、自社業種との適合性・担当者の対応力がカギです。
まとめ
登録支援機関は、外国人材の就労支援だけでなく、生活の安心・安定を支える不可欠な存在です。
企業としても、法令を遵守しつつ、円滑な受け入れ・定着支援を実現するために、信頼できる支援パートナーを選ぶことが成功のカギです。
価格だけでなく、言語対応力・支援品質・対応スピードなどを総合的に評価し、自社と外国人材に最適な支援体制を構築しましょう。
出典・参考資料
- 出入国在留管理庁「登録支援機関制度について」
https://www.moj.go.jp/isa/content/001298129.pdf - 登録支援機関検索ポータル
https://www.moj.go.jp/isa/support/portal_support.html - 登録支援機関に関するQ&A(法務省)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001290875.pdf - 特定技能ポータルサイト
https://www.ssw.go.jp/