はじめに
日本の企業が外国人を受け入れる手段として、近年注目されている「特定技能制度」。
一方で、これまで多く活用されてきた「技能実習制度」と混同されがちですが、制度の目的・就労条件・対象者・受け入れ体制などは大きく異なります。
この記事では、技能実習制度と特定技能制度の違いをあらゆる角度から比較し、それぞれの制度の特徴や企業としての選び方のポイントを解説します。
それぞれの制度の目的と背景
● 技能実習制度とは?
1993年にスタートした制度で、開発途上国への技能移転を目的としています。
日本の企業で一定期間働きながら技能を学び、自国の発展に貢献することを目指しています。
☑ 目的:国際貢献(技能移転)
☑ 本質的には「教育・研修制度」
● 特定技能制度とは?
2019年に導入された新制度で、人手不足分野への即戦力の確保が主目的です。
日本語能力と業務スキルを持つ外国人を、就労者として正式に雇用する制度です。
☑ 目的:労働力の確保
☑ 本質的には「労働力受け入れ制度」
比較表:技能実習と特定技能の主な違い

雇用する企業側から見たメリット・デメリット
● 技能実習制度のメリット・デメリット
メリット:
- 長年の運用実績があるため、制度に慣れた監理団体が多い
- 経費や受け入れ手順が比較的固定されている
デメリット:
- 実習生の自由度が低く、モチベーション維持が課題
- 「研修」の名目と実態の乖離による社会問題が発生
- 基本的に転職不可で労働環境トラブルが発生しやすい
● 特定技能制度のメリット・デメリット
メリット:
- 試験合格者=即戦力であり、業務理解が早い
- 転職や業種変更が可能なため、企業・本人双方に柔軟性
- 長期雇用や永住権の可能性もあり、定着率が高い傾向
デメリット:
- 導入から日が浅く、制度理解が浸透していない
- 日本語能力や業務知識の確認・評価が企業側に必要
- 登録支援機関を使う場合の手数料や管理負担があ
どちらの制度を選ぶべきか?企業にとっての判断基準

よくある誤解・Q&A
Q. 技能実習から特定技能に変更できるの?
→ はい、可能です。
技能実習2号を良好に修了した場合、技能試験や日本語試験を免除され、特定技能1号への移行が可能です。
Q. 特定技能は自由に辞めて転職できるの?
→ 基本的には可能ですが、在留資格の変更申請や入管への届出が必要です。業種をまたぐ場合は新たに試験を受ける必要もあります。
今後の制度見直しについて
政府は現在、技能実習制度の廃止と特定技能制度への一本化を検討しています(※2024年11月時点で制度見直し方針が公開)。
つまり、将来的には「実質的な労働者としての受け入れ制度」は特定技能制度に一本化される可能性が高く、制度の移行期にある現在こそ正しい理解が必要です。
まとめ
技能実習制度と特定技能制度は、目的も運用方法もまったく異なる制度です。
企業としてどちらを選ぶべきかは、自社の採用目的、受け入れ体制、求める人材像によって異なります。
今後の制度改正も視野に入れ、柔軟かつ戦略的な外国人材活用を目指すことが求められます。
出典・参考資料
- 出入国在留管理庁「特定技能制度の概要」
https://www.moj.go.jp/isa/content/001335263.pdf - 外国人技能実習機構(OTIT)公式ページ
https://www.otit.go.jp/ - 厚生労働省「外国人雇用対策」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198337.html - 特定技能制度に関する有識者会議(令和5年11月報告書)
https://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/03_00001.html